ABC分析とは何か
80対20の法則というものがあります。ざっくり、説明すると、売上高の8割は、全体の取引先の2割が生みだしている、という法則です。これは、ABC分析ともいわれ、こちらの呼び名が認知度は高いかもしれません。ABC分析は、取引会社ごとの売り上げ分析の一つです。80対20の法則を会計データとして客観的に裏付けするものです。
[例2]をつかって、ABC分析をみていきましょう。
説明を簡単にするために取引会社の名前をアルファベット名で表します。
[例2]日本商事株式会社のおもな取引会社をABC分析すると[表1]のようになります。
[表1]
販売順位 | 会社名 | 売上高(百万円) | 構成比(%) | 累積(%) |
1 | A社 | 100 | 25.6 | 25.6 |
2 | B社 | 95 | 24.3 | 49.9 |
3 | C社 | 90 | 23.1 | 73.0 |
4 | D社 | 50 | 12.8 | 85.8 |
5 | E社 | 20 | 5.1 | 90.1 |
6 | F社 | 15 | 3.8 | 94.7 |
7 | G社 | 15 | 3.8 | 98.5 |
8 | H社 | 5 | 1.3 | 99.8 |
合計 | ― | 390 | 100 | ― |
それでは、この[表1]を使って、ABC分析の作成手順をみていきましょう。
作成手順は、とても単純です。まず、取引会社ごとに売上高が多いものから順番に整理していきます。ここでは、1位から8位までの8社を扱っていきます。つぎに売上総額に占める取引会社ごとの構成比を計算します。
たとえばA社なら売上高が100百万円です。販売順位の1位から8位までの売上高総額が390百万円ですから、構成比の計算はつぎのとおりになります。
A社売上高 売上高総額 売上高構成比
100 ÷ 390 = 25.6(%)
構成比は、25.6 %と計算されます。取引会社ごとに販売構成比を計算していきましょう。
つぎに累積比の計算です。これは、構成比を加えていくだけの計算です。B社の累積数字は49.9%ですが、この計算方法はつぎのとおりです。
A社構成比 25.6% + B社構成比 24.3% = 49.9%
ABC分析の活用
[表1]の作成ができたところで、ABC分析の実践的な活用方法をみていきましょう。
[表1]の累積比数字に注目してください。そして、この累積比数字のおおよそ75%と90%あたりで、色分けします。
[表1]のABC分析
販売順位 | 会社名 | 売上高(百万円) | 構成比(%) | 累積比(%) |
1 | A社 | 100 | 25.6 | 25.6 |
2 | B社 | 95 | 24.3 | 49.9 |
3 | C社 | 90 | 23.1 | 73.0 |
4 | D社 | 50 | 12.8 | 85.8 |
5 | E社 | 20 | 5.1 | 90.1 |
6 | F社 | 15 | 3.8 | 94.7 |
7 | G社 | 15 | 3.8 | 98.5 |
8 | H社 | 5 | 1.3 | 99.8 |
合計 | ― |
この区分けによって、取引会社8社をABCの3つのグループに区分します。それぞれのグループの考え方はつぎのとおりです。Aグループ(赤)は、「最重要取引会社」になります。いわゆる「お得意様」です。ですから、取引会社のニーズや経営方針、あるいは担当窓口となる社員の動きに細心の注意を払う必要があります。Bグループ(青)は、Aグループの次に重要となる取引会社です。Cグループ(黒)は、あまり取引のない会社です。つまり現在は、売り上げにあまり貢献していない取引会社です。
ところで、このABC分析によって気づくことがあります。日本商事株式会社の取引会社は、8社ありますが、そのうちわずか3社だけで、売り上げの70%を越えているという事実です。つまり、この3社の管理を重点的に行っていくことが、営業戦略上、重要であることが明快になります。ABC分析によって、どの取引会社が重要であるのか、が客観的にわかります。会社にとって、どの取引会社も大切であることに議論の余地はありません。今は、小さな取引金額だったとしても、今後、大きな取引金額に発展する可能性があるからです。しかし、一方で、会社は、効率的に営業活動をおこない利益を稼がなければなりません。
AグループとCグループを同じ意識で営業を行うことが、果たして、効率的といえるでしょうか。売上げに貢献度の高いグループこそ、多くの営業時間を割くべきでしょう。