中小企業の競争戦略

マイケル・ポーターの競争戦略

企業の競争戦略について、マイケル・ポーターは、「業界全体を対象とし、低価格で優位性を構築する戦略(コストリーダーシップ戦略)」、「業界全体を対象とし、製品やサービスの差別化で優位性を構築する戦略(差別化戦略)」、「特定の狭い市場を対象とし、低価格、若しくは、差別化に向けて資源を集中させる戦略(集中戦略)」の三つに類型化できると提唱した。ここでは、ポーターの競争戦略の類型化を参考に、集中戦略を更に「特定の狭い市場を対象とし、低価格で優位性を構築する戦略(コスト集中戦略)」と「特定の狭い市場を対象とし、製品やサービスの差別化で優位性を構築する戦略(差別化集中戦略)」に分け、中小企業の競争戦略の実態を把握していく。

対象市場 優位性
低価格 差別化
広いターゲット ①   コストリーダーシップ戦略 ②   差別化戦略
特定のターゲット ③   コスト集中戦略 ④   差別化集中戦略

 

全体としては、「④差別化集中戦略」を採る企業が最も多く、次いで、「②差別化戦略」を採る企業の割合が高く、低価格ではなく、差別化による優位性構築を志向する企業の割合が高い。また、「宿泊業,飲食サービス業」、「小売業」、「不動産業,物品賃貸業」では、広い市場を対象とした、「②差別化戦略」や「①コストリーダーシップ戦略」と回答する企業の割合が比較的高くなっている。

競争戦略と企業業績

競争戦略と営業利益率の関係を見ると、特定市場をターゲットにした集中戦略、中でも、「④差別化集中戦略」を採る企業の営業利益率が高い傾向にある。他方で、競争戦略と労働生産性の関係を見ると、「①コストリーダーシップ戦略」を採る企業の労働生産性がやや高くなっているものの、戦略ごとでの大きな差は見られない。いずれの戦略が優れているということではなく、自社の強みや競争環境を踏まえて適切な戦略を採ることが重要であるといえる。

結果として、差別化に成功している企業ほど労働生産性が高い傾向にある。

また、競争戦略別に、差別化の観点での優位性評価の程度と営業利益率の関係を見ると、特に特定のターゲットを対象とする「③コスト集中戦略」と「④差別化集中戦略」を採る企業において、差別化の成否が営業利益率に大きく影響していることが分かる。

(中小企業白書 2020)